七夕には何食べる?優しいツイストドーナッツ(麻花)を作りましょう。

もうすぐ七夕。
中国から伝来した、裁縫や機織りの上達を願う伝統行事です。
この日に皆さんは、何か楽しみにしている食べ物はありますか?
糸を模したそうめん、涼し気な青い洋菓子などが人気ですよね。
この記事では、七夕にこめられた人々の思いを改めて見つめ、後半では七夕にふさわしい、糸の形をしたツイストドーナッツ「麻花(マーホア)」をご紹介します。
さっくりふんわり、ほんのり甘いドーナッツは、実は七夕を生んだ中国の伝統のお菓子。ぜひ最後までご覧になり、一緒に作ってみてくださいね。
七夕と言えば機織りと裁縫:人が生きるための技術そのもの

昔の人にとって裁縫は、趣味や習い事ではありませんでした。
それは日々を生きるために欠かせない生活技術です。
いま私たちは、お店でS・M・Lのサイズを選ぶだけで、服を気軽に手に入れることができますよね。
サイズが少々合わなくても、そもそも伸びる生地で作られていることが多いので、誰でも着やすいのが現代の既成服です。
でも昔は身にまとうものを手に入れるには、畑の麻や綿から糸をつむぎ、機織りで布にするところからスタートします。

麻や木綿でできた生地は伸びず、逆に絹は滑りやすく繊細でした。
このような生地を使い、もし動きやすく着心地のよい服を作ろうと思えば、「ゆとり」の持たせ方、縫い目の強さ、肌への当たりまで、細やかな工夫と技術が求められました。
しかも、それらすべてを限られた針と糸、布、灯りの少ない環境の中、一針ずつ手で縫っていたのです。
高齢になって視力が衰えれば、それだけで服の手入れも難しくなり、生活の自立に関わる問題となりました。
そもそも針や布そのものが自力で手に入りづらく、布製の服が持てない人もいた時代です。
たとえ材料があっても、未熟な縫製では服がすぐにほつれてしまい、日々の労働に耐えられません。
最後まで資源を使い切るために、縫製をあまりかけずに体に巻くようにしたり、あるいは布の強度をあげるために、特殊な縫い方を工夫したりしました。
機織り・裁縫とは、誰にとっても欠かせない、まさに「生きる力」そのものだったのです。
七夕の発祥地、星を見上げた中国の人々

世界中で不可欠であった機織りや裁縫の技術ですが、中国の人々はこの上達を、七夕で星に祈りはじめました。
雨に恵まれ緑豊かな日本が、昼間の暮らしを重んじた一方で、広大な中国に暮らす人々は、古くから夜の世界にも注目してきました。
彼らは星や月の動き、その規則性を研究し、暦などすばらしいものを生み出しました。
星にも神話を見出し、裁縫や機織りといった生活の技術はもとより、様々なことを星に重ねたり、願ったりするようにもなります。
特に七月七日は、陽の数である「七」が重なるめでたい日とされ、この日の夕方には「七夕(しちせき)」の行事が行われるようになりました。
織姫と牽牛の伝説と結びつき、技芸の上達を星に祈る習わしとして親しまれるようになったのです。
この風習はやがて日本にも伝わり、もともとあった日本の「棚機津女(たなばたつめ)」の神話と融合し、宮中行事として受け入れられました。
その後、「たなばた」という呼び名とともに民間にも広まり、裁縫を始め、いろいろな技術を高めたいと願う人々の心を映す行事として根づいていきます。


どうやら七夕は、ただ空を見上げ、離れ離れの恋人が再会を果たす日ではないようです。
七夕は、かつての人々が、手を動かし、生活のための技の上達を願いながら過ごした日。
そんな思いを今に伝えるお菓子が、中国の「麻花(マーホア)」です。
七夕の食べ物に管理人がお勧めする:麻花(マーホア)

麻花は、小麦粉を練って糸のように撚り、揚げて作る、伝統的な「ねじねじかりんとう」です。
日持ちするように固く作られることが多く、地方ごとに味や食感が異なります。
たとえば天津の「十八街麻花(シーバージエ マーホア)」は撚りの技が見事で、様々な風味があり、非常に日持ちするので有名です。
日本で中華菓子として市販されている麻花はかなり硬めで、「よりより」や「マファール」という呼称で知られています。

どれも小麦の甘みがしっかり味わえるお菓子ですが、今回は子どもからお年寄りまで安心して食べられる、中国東北地方の柔らかいパン形式の麻花(マーホア)をご紹介します。
表面はさくっ、中はふんわり。
東北の麻花は、素朴ながらしっかり満腹感が得られる、ほのかに甘い優しいドーナッツ。
七夕に限らず、現地では通年で親しまれている味です。
では、いよいよ作ってみましょう!
七夕に食べたい「東北大麻花」

材料 15cm程度のもの、6個分
薄力粉250g
強力粉250g
インスタントイースト 5g
ベーキングパウダー 4g
グラニュー糖 30g
はちみつ20g (なければグラニュー糖30gに置きかえる)
塩 ひとつまみ
たまご1個(室温に戻しておく)
牛乳またはお湯 230g程度 (40度に温めておく)
サラダオイル 20g (バターでもよい)
サラダオイル(揚げ用、塗り用) 適宜
作り方

ボウルに20gのサラダオイル以外の材料を入れ、箸やへらでまぜる。

サラダオイル20gを加えて、指先で少しこねる。
オイルがなじんだら、ボウルに濡れ布巾をかけて10分休ませる。
生地を台にとり出し、表面に光沢が出るまでしっかりと捏ねる。

再びボウルに戻し、濡れ布巾をかぶせ、生地が二倍の大きさに発酵するまで休ませる。
とり出して生地の中のガスを出す。
生地を12等分する。
ひとかたまりは70gになる。
これらを8cmほどの棒状にし、ひとつづつサラダオイルをまぶし、蓋をし、冷蔵庫で20分から30分休ませる。

2本とりだし、それぞれ40cm程度の細長いひも状にする。(もっと長くしてもよいが、揚げる鍋も大きいものが必要になる)
2本の両端をくっつけたら、左右の手で逆方向にきっちりとねじり、撚りをかける。


これを二つ折りになるように両端を持って持ち上げると、自然に大きな撚りがかかる。

先端は指でつまんでしっかりとくっつけ、織り込んで撚りの輪の中に入れ込む。
(揚げた時に、生地が膨らんで、撚りがばらけてしまいがちなので、先端はしっかりとくっつけること)
バットなどに並べ、ラップや濡れ布巾をかぶせ、約二倍に膨らむまで20分発酵させる。

揚げ油を160度に予熱する。
生地は、なるべく成形した順番で揚げていく。
油にいれたときに小さな気泡がたてばちょうどよく、もしいっぺんに大きな気泡や音がでるようなら、温度が高すぎる。

ずっとぱちぱちと小さな音がするくらいの状態を保ち、途中菜箸で泳がせながら、均一に火が通るようにする。上下も何度かひっくりかえして、ぜんたいがキツネ色になるようにする。
揚げる時間は5分から6分が目安。
よい揚げ色がつき、菜箸で触れた感じに弾力があればできあがり。

先端の細めの所がカリカリっとかりんとうのようになり、中央のふっくらしたところはサクッとふんわりドーナッツのようになると、食感に変化があっておいしいので、揚げあがりは先端がやや濃いと思うくらい、深めのキツネ色で良い。

ほんのり甘く、小麦を揚げた素朴な味をたのしむパンです。
分量のうち、はちみつはできあがりの風味を左右するので、好きな花の蜜を使ったり、量も砂糖と組みあわせて、好みの甘さになるよう増減されるとよいでしょう。
七夕には何食べる?優しいツイストドーナッツまとめ
七夕の食べ物といえば、そうめんが真っ先に思い浮かびますが、その由来は索餅(さくべい)という小麦粉で作られた中国由来の食品にあると言われています。
つまり、七夕はその起源から食べ物にいたるまで、中国と深いつながりのある行事なのです。
日本と中国は、まるで織姫と彦星のように、広い海をはさんで互いに隔たりながらも、歴史や文化の中で深く結びついてきました。
今年の七夕は、そんなご縁に思いを馳せながら、中国の伝統食「麻花(マーホア)」で、やさしいひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
星空の下、人々の願いが撚り合わせた糸のように、私たちのアジア全体でひとつになれるなら、それはほんとうに素敵なことですね。

参考レシピ
Fancy Notes,軟麻花 東北大麻花的做法 Soft Fried Dough Twists
彩虹小厨,教你在家做老式软麻花,面点师专业配方,软松香甜又起茬,太香了
涛姐美食,老式软麻花,这配方一定收藏,只需简单几步,外酥里软放5天不硬
参考文献
三舟隆之,佐藤つかさ,田村真亜子,細野朱里,古代の「索餅」とその再現の諸問題,国立歴史民俗博物館研究報告,第244集,2024
市毛弘子,索餅の起源と用いられ方,および索餅から索麺への変遷過程(第2報) 近世を中心として,家政学雑誌,37,6, pp465-473,1986
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